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2021 WINTER

イデオロギーよりも大事なものとは

実話をモチーフにしている映画『モガディシュ』は 、30年前のソマリア内戦で共に生き残った韓国大使館と北朝鮮大使館職員の脱出劇をリアルに描いている。生存本能の前でイデオロギーや体制というものがどれほど無力なのかを、リュ・スンワン監督ならではのヒューマニズムで暴く。


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2021年7月に公開された『モガディシュ』は、1990年のソマリア内戦当時、韓国と北朝鮮の大使館職員が力を合わせて、混沌に包まれた都市を脱出する実話に基づいて制作された映画である。「1台の車が、雨あられと飛び交う銃弾を避けて砂漠を疾走するイメージから誕生した」というリュ·スンワン監督の説明のように、4台の自動車に乗り分けた両国の外交官とその家族の緊迫した脱出シーンが映画の白眉だ。旅行禁止国家であるソマリアに接近できなかったため、ソマリアと風景が似ているモロッコのエッサウィラでオールロケの撮影を終えた。ほとんどのシーンをCGなしで実際に撮影している。
© ロッテエンタテインメント

「ミラクル作戦も映画にする準備にとりかからなければならないのかな」。

先日、アフガニスタンからの救出劇、いわゆる「ミラクル作戦」を見守りながら、映画『密輸』撮影の真っ最中のリュ・スンワン監督に関連記事を送ったら、「スマイル」の絵文字を付けて返ってきた彼の返事である。

今年の8月の米軍撤退後、タリバンが再占領し修羅場となったカブールで、これまで韓国政府に協力したアフガン民間人とその家族を脱出させた政府の決断と断行は、国際社会における連帯感と責任感を示したという点で大きな反響を呼んだ。私は、この作戦を見守りながら、新型コロナによるソーシャルディスタンスの確保という厳しい状況下でも、累積観客動員数300万人の大台を突破し、上映が延長されたリュ・スンワン監督の映画『モガディシュ』(Escape from Mogadishu:2021)が自然と思い浮かんだ。

運命のような出会い
「一台の車が雨あられのように飛び交う銃砲弾を避けて、砂漠を疾走するイメージから始まった」。2年前、リュ監督所属の映画製作会社「外柔内剛(Filmmaker R&K)」が制作したサバイバル・パニック映画 『EXIT イグジット』 の試写会で出会った時、リュ監督がこう語った。前作の『軍艦島』(The Battleship Island:2017)以降、臥薪嘗胆していた彼が、『モガディシュ』を自分の11作目の長編映画として決めたちょうどその時期である。

撮影に入る前の彼は言葉を慎んではいたが、その日交わした短い会話で、彼がどんな背景と雰囲気の作品を構想しているのか予想できる手がかりを二つ手に入れた。一つ目は、実話をモチーフにするということ、二つ目は、韓国と北朝鮮の人々が雨あられのように降り注ぐ銃弾の中、共に砂漠を疾走するということだった。具体的にどんなストーリーなのかとても知りたかったが、映画館の客席でその答えを得るまで2年もかかってしまった。

『モガディシュ』の背景は、映画よりもさらに映画のような実話に基づいている。1990年12月30日、ソマリアの首都モガディシュで、モハメド・シアド・バーレ(Mohamed Siad Barre)将軍率いる長期独裁政権を拒否するクーデターが起こり、それが内戦へとつながった。当時、モガディシュには韓国と北朝鮮の大使館がそれぞれ駐在していて、相互非難と工作活動を繰り広げていたのだが、両大使館の職員が力を合わせて、共に混沌の都市を脱出することに成功する。

リュ監督が、大韓民国の外交史で最も劇的な瞬間だったこの事件をスクリーン上の映像で綴ろうと決めた理由は何だろうか。それはおそらく、対峙していた韓国と北朝鮮の外交官たちが、第3国で、しかもはるか遠く離れたアフリカ大陸で幾度も死線を超えながら協力し奮闘したあの事件に、単なる興味以上のある感動を覚えたからであろう。

リュ監督はある日偶然、自分のオフィスに立ち寄った後輩から、1991年、東アフリカ・ソマリアで起きたこの事件を耳にした。『神と共に 第一章:罪と罰』(Along with the Gods: The Two Worlds)シリーズを制作したデクスター・スタジオ(Dexter studios)が映画化を準備しているという話を聞いたのもこの時である。ちょうど『ベテラン』の後半作業をしているときであった。

それから2~3年が経過し、デクスター・スタジオが彼に演出の話を持ちかけてきた。リュ監督は「詳細な事実が知りたくて、当時のマスコミの報道と関連資料を調べてみると、あまりにも劇的なストーリだったので、誰でも構わないのでうまく制作して欲しいと思った」と話した。監督と映画はこうしてまるで「運命のように」出会った。

彼がこの事件に魅了されたのは、何よりも「一緒に脱出した韓国と北朝鮮の外交官たちが特殊部隊員やスパイではなく民間人だった」からである。「一般人が劇的な状況を経験する中で発生するサスペンスに興味津々だったし、これまでの映画とは一味違う新たな試みができそうだと思った。その点が私を突き動かす原動力となった」というのがリュ監督の説明である。彼は実話を取材し直し、映画として再構成した。

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モガディシュが武装した軍人と反乱軍との銃撃戦で修羅場になる前に、韓国と北朝鮮の外交官らはそれぞれ自国の国連加盟に必要なソマリア政府の支援を受けるために激しい外交戦を繰り広げていた。韓国大使役のキム·ユンシク(前面の左)と北朝鮮大使役のホ·ジュンホが緊張関係を演出する。
© ロッテエンタテインメント

冷戦の中の熱い感動
映画は、1990年12月上旬から内戦が始まり12月30日を経て、両国の外交官たちがモガディシュを脱出する1991年1月12日までの約一カ月の間の出来事を描いている。リュ監督は、歴史的事実の背景と進展、そしてその結末を忠実に引き出す一方で、キャラクターと事件の詳細を映画的手法で新たに構成している。それは彼がこの映画のシナリオを描く過程で最も大変だった作業でもある。

リュ監督は「その期間はソマリアの政治・社会的状況が急変する時期だったため、この激動の変化をいかに表現し、また両国の大使館の職員が大韓韓国大使館官邸で一緒に過ごした12日間をどのようなストーリーで詰め込むかが作品のカギだった」と当時を回想した。

この映画では、大きく二つの戦争が前半と後半を交差しながら展開する。厳かなアフリカ風な音楽が背景に流れる中、海から眺めるモガディシュの風景――これまで韓国映画では見られなかったオープニング・シーケンスに続く映画前半では、韓国と北朝鮮の間で外交戦が繰り広げられる。

両国の大使は、先を争って大統領や長官などソマリアの政府関係者に会って熾烈なロビー活動を繰り広げる。「人間に人格があって、国にも国格があるように、外交にも格調というものがある」といわれるが、国連加盟に必要とされる加盟国の賛成票さえ獲得できれば危うい裏工作も辞さない。作品に登場する北朝鮮大使の語るセリフにもあるように、冷戦末期当時、力関係で優位に立っていたのは、「韓国より20年も先立ってアフリカに基盤を築いた」北朝鮮である。韓国大使は、北朝鮮の大使が仕掛けた罠にはまっていつも無駄骨を折る。

映画の前半では、主要キャラクターをきめ細かく構築すると同時に、ソマリア内戦が続く過程が念入りに表現されている。その意図をリュ監督はこう説明している。

「観客が作品の中の人物に感情移入し、彼らと共に内戦状況を体験するためには、少なくとも内戦の過程がいかに展開されるのかをリアルにに示さなければならないと思った。正直、映画が公開されるまで気をもんだ。映画を制作する側は作品の中で起こる事件について非常に詳しく知っているが、観客にとってはそれが初めての経験のはず。そのため、不慣れな歴史的背景が正確に伝わらないのではないかと心配になった。幸いなことに観客は映画の中の内戦状況をよく理解したようだ」。

反軍が本当の戦争を起こすストーリーの中盤からは、北朝鮮に傾いていた秤の重りがバランスを保っていく。爆弾テロが発生し、人々が動揺し、軍部がモガディシュに進入し、政権を掌握するクーデターの一連の過程が細かく描かれる。徐々に敍事は南北の外交戦からモガディシュ脱出劇へと転換していく。

緊迫した状況の中で韓国の大使が、「助けてほしい」と助けを求める北朝鮮大使館職員を受け入れた瞬間から、韓国と北朝鮮は同じ方向を向き始める。彼らにはそれぞれの事情、韓国への転向や北朝鮮の人との接触による国家保安法違反などに神経を使う余裕などない。目的はただ一つ。脱出に成功し生き残ること。

リュ監督が脱出劇というジャンルを試みたのは今回が初めてではない。『軍艦島』の終盤でも朝鮮人徴用労働者が集団で脱走する。しかし、その脱出シーンが監督の映画的想像力によって作られたファンタジーだったならば、『モガディシュ』の脱出劇は実話をモチーフにしているという点で違いがある。

ほぼ同時期のソマリアを背景にしたハリウッド映画『ブラックホーク・ダウン』(原題:Black Hawk Down:2001)や米中央情報局(CIA)要員がイラン人の厳重な警備を引き離し、在イラン米国大使館職員を脱出させる『アルゴ』(原題:Argo;2012)も実話をもとにした脱出劇ではある。しかし、国が自国民を救出する作戦を描いた前述の二つの作品とは異なり、『モガディシュ』は、内戦で治安が崩壊し通信が不能状態に陥った駐在国の首都を、冷戦の中対峙する敵国同士の外交官たちが国の支援なしに、自力で脱出するという点で明らかに違う。

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11月10日、リュ·スンワン監督は『モガディシュ』で韓国映画評論家協会から今年の監督賞を受賞。同映画はこの日の授賞式で撮影賞、音楽賞、助演男優賞を受賞し、4冠の栄誉にあずかった。また、来年3月に開催される第94回アカデミー賞国際長編映画賞部門の出品作品にも選ばれた。
© ロッテエンタテインメント

リュ·スンワン流のヒューマニズム
韓国と北朝鮮の大使館職員20人余りが自動車4台に乗り分け、火炎瓶と銃弾の降り注ぐ中をかいくぐりイタリア大使館に向かって疾駆する映画の終盤こそ、この映画のハイライトであると同時に、リュ·スンワンならではのヒューマニズムがそのまま反映された名場面である。

リュ監督の前作『ベテラン』での、フォード車マスタングがソウル明洞(ミョンドン)の街を疾走するシーンとは異なり、この映画に出てくる自動車はいずれも「砂袋と本をぶら下げて」の走行のためスピードが出ず、観客をハラハラさせる醍醐味がある。それにもかかわらず、鮮やかなサスペンスが感じられるのは、おそらく観客が一緒に車に乗っているかのような感覚を作り出しているからだ。

リュ監督は「リアルでなければならないという原則の中でも気にかけたのは『スペクタクルであってはならない』だった。降り注ぐ弾丸と火炎瓶の中を疾走する人物たちの切迫感を伝えるためには、スペクタクルよりもサスペンスを構築する方が重要だった」と述べ、「自動車の外観よりも車内状況を重点的に撮影したのもそのためだ。何よりも観客にまるで車の中に乗っているかのような没入感を感じさせるためには、サウンドを鮮やかに具現化することが重要だった。サウンドチームが録音室で車の音と銃撃の音をリアルに再現するために奮闘した」と説明した。

定員いっぱいの人を乗せた自動車4台が遅いスピードで反軍の追撃をかわすという息が詰まるようなシーンを、ごく一般的な人物のクローズアップショットや涙腺を刺激するオーケストラ音楽なしでカメラに収めたのがとても印象的である。また、ソマリアを脱出した飛行機の中で、韓国と北朝鮮の人たちが互いに別れの挨拶を交わすシーンもこざっぱりとしていて淡々と描かれている。

リュ監督は「飛行機の中でそのシーンを撮るとき、多くの俳優が泣いた。撮影後半だったからおそらく感情的にも高まった状態だったのだろう。実際に長い時間、緊張した状態で一緒に過ごしたのだから」と語りながらも、「そのシーンが過去形で終結するストーリーではなく現在進行形の力を持つためには、カタルシスを感じさせるよりも、余韻を残すことが重要だと思った。皆、その状況にどんな感情と意味を込めなければならないのかをよく知っていたのだから」と述べた。

両国の大使館職員が初めて夕食を共にする映画の中盤で、韓国側の大使夫人がひっついているゴマの葉を取ることができず困っているところを、北朝鮮の大使夫人が自分の箸でそっと押して手助けするシーンが胸に迫るのも、イデオロギーを超えた連帯感があったからだろう。おそらくこのシーンで、パク·チャヌク監督の『JSA』(原題:共同警備区域JSA)で、韓国と北朝鮮の兵士が一つのチョコパイで友情を交わした場面が自然に浮かんだのも同じ理由からだろう。

切羽詰った状況でどんな手を使ってでも最後まで生き残らなければならないという強い意志と、体制やイデオロギーより人間の命の方が大事だというヒューマニズム――これがリュ監督が長い間追求してきたメッセージである。



キム・ソンフン金成勳、 シネ21、リポーター

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