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2024 SPRING

インフルエンサーになった韓国のキャラクター

韓国のキャラクターコンテンツ産業は、キャラクターの世界観を拡大し、様々な形式を活用した戦略を通じて、知的・産業財産権の核心として浮上中だ。これまで子供とキッダルト(kid と adult の合成語)に限られていたキャラクター消費文化が、全世代へと広がると同時に、韓国産キャラクターの人気が国内を超えて世界に向かっている。
ベリーコム

2022年5月、京畿道(キョンギド)義王市(ウイワンシ)にあるロッテプレミアムアウトレット・タイムビラスで、高さ15mの超大型ベリーコムを見上げている人々。ベリーコムはロッテホームショッピングが2018年に独自制作したキャラクター。企業のキャラクターとして代表的な成功例に挙げられている
ⓒ ベリーコム


携帯電話のメッセンジャーのスタンプサービスは、今や老若男女を問わず誰もが日常的に使用している。また、家の前のコンビニでキャラクター人形を手軽に買うことができるほどに、その気になればキャラクターに簡単に接することができる。しかし1980年代以前は、国内でキャラクターと言えば、漫画やアニメーションに登場する主人公を指す用語に過ぎなかった。

キャラクター市場の発展

キャラクターの概念が拡大したのは、国内ファンシーグッズ産業が発展し、キャラクター市場が徐々に形成され始めた1980~90年代だ。特にマンガ家キム・スジョン(金水正)の「赤ちゃん恐竜ドゥーリー」は、漫画雑誌『宝島』に1983年から10年間連載されたが、独特なキャラクターとユーモラスなセリフが高い人気を得て、1990年代半ばから玩具や文具をはじめとして衣類、電子製品、床装飾材などにキャラクターが用いられて様々な商品が開発された。

また1990年代末から2000年代初めは、超高速インターネット網が全国的に普及した時期で、当時登場したインターネットベースのフラッシュアニメは、新しいスタイルのキャラクターをたくさん作りだし、キャラクターファン層を拡大するのに一役買った。その中でも、作家キム・ジェイン(金在仁)の『マシマロの森の物語』の主人公であるマシマロは「猟奇ウサギ」と呼ばれて爆発的な人気を呼び、アメリカや日本にも進出した。同じ時期、キャラクターデザイン会社VOOZCLUBが制作した『プッカ』は欧州に進出して成功を収めた。マシマロとプッカは、それまで海外キャラクターを中心に消費していた韓国市場で、国産キャラクターのシェアを引き上げるのに大きな貢献をしたと言える。

一方、2010年代にはいりスマートフォンの発展がキャラクター産業に大きな変化をもたらした。モバイルメッセンジャー・カカオトークは、自主開発した公式キャラクターの「カカオフレンズ」を2012年からサービス開始して高い人気を得た。2017年度の韓国コンテンツ振興院が調査したキャラクター選好度調査では1位を占めた。疎通の道具だったカカオフレンズは、ユーザーがキャラクターを通じて自分の感情を表現するようになったという点で既存のキャラクターとは違い、国内キャラクター産業に新たな転換期をもたらしたと評価された。

ファンダムの形成

現在、韓国のキャラクターコンテンツは消費文化の中心として浮上しており、またさらに新たな局面に入ろうとしている。最近、最も注目される現象は企業が自社キャラクターを開発するケースが増えている点だ。2024年1月、ソウル聖水洞にあるフラッグシップストアー(旗艦店)「GS25 DOOR to 聖水」の前には、期間限定店舗がオープンし、「MOOMOOSSI」を見に来た人々で賑わった。MOOMOOSSIの描かれた立て看板の前には、認証ショットを撮ろうと携帯電話を手にした人々が行列をなした。MOOMOOSSIとは、コンビニエンスストアGS25の運営会社GSリテールがチベットスナギツネを擬人化し、2022年に公開したキャラクターで、インスタグラムで2万人以上のフォロワー数を確保して認知度を高めた。GSリテールはMOOMOOSSIグッズの1年累積販売量が100万個を超えたと、その成功を明らかにした。

2018年にロッテホームショッピングが社内ベンチャーを通じて制作したキャラクター「ベリーコム(Bellygom)」は、企業が自主制作したキャラクターの代表的な成功例とされている。このキャラクターはユーチューブのドッキリカメラコンテンツを通じて認知度を高めてファンダムを確保し、2022年には韓国コンテンツ振興院が主管する大韓民国コンテンツ大賞でキャラクター部門の大統領賞を受賞した。最近、ベリーコムの人気は韓国を超えて全世界に拡大している。これによりロッテホームショッピングは、ベリーコムIPの海外進出を本格化している。MOOMOOSSIとベリーコムの事例は、今やキャラクターが前面に出て消費者を集めファンダムを形成する役割を果たすようになったことを示唆している。

公共システムでもキャラクターを活用した疎通を積極的に導入している。自治体が地域を代表するシンボルとしてキャラクターを活用し始めたのは1990年代中ごろからで、当時はマスコット以上の効果を得ることはできなかった。その後、京畿道高陽特例市が市の広報のために2011年に開発した「コヤンコヤンイ」の成功を契機に、キャラクターを通じた地域発展の可能性が開けた。最近では同じ京畿道の龍仁特例市の代表キャラクター「ジョアヨン」が注目されている。2016年に公開されたこのキャラクターは、ユーチューブやスタンプなど、コンテンツを多角化し、新規デザインを継続して開発している点が人気を維持する要因となっている。最近エバーランドと協力して制作したグッズは、発売2週間で4千個以上を売り上げ、公共機関のキャラクターも商品となり得ることを立証した。

MOOMOOSSI

GSリテールが2022年にブランディングしたMOOMOOSSIは、インスタグラムで2万人以上のフォロワー数を確保した。認知度が高まり50種類に及ぶ関連グッズも販売されている。
ⓒ GSリテール

サブキャラクターの登場

サブキャラクターが注目されている点も興味深い。「ジャンマンルピ―」が代表的なケースだ。このキャラクターは幼児向けのテレビアニメ『ポンポン ポロロ』の登場人物の一つだ。2003年にEBSで放送開始されたこの作品は、主人公のポロロが「子供たちの大統領」と呼ばれるほどに大ヒットした。ポロロのキャラクターグッズも飛ぶように売れて、国産キャラクターが輸入キャラクターのシェアを始めて上回るようになり、それにより韓国キャラクター産業の歴史を大きく変えた主役だと評価されている。

一方、原作でポロロの友達として登場するルピーが、2019年インターネットを通じて話題となり、2020年にはカカオトークのスタンプとして登場した。原作のポロロが子供たちに人気だったのに対して、ジャンマンルピ―という名前で復活したこのキャラクターは、若者世代から脚光を浴びている。ジャンマンは行動が小憎らしく、突拍子もないという意味だが、はっきりと言いたいことを言う賢くかわいいキャラクターと認識され、若者層から大きな共感を得ている。このキャラクターはイタリアの高級ブランドであるブルガリのアンバサダーとして活動したり、『ヴォーグコリア』のグラビアモデルになるなど、キャラクターコラボレーションの範囲を大きく拡大している。最近ではジャンマンルピーの人気が中国にまで広がっている。2023年5月中国のSNSアプリ「小紅書」に開設された公式チャンネルは7カ月でフォロワー数が440万人を超えた。

 最近

最近、20~30代に爆発的な人気を得ているジャンマンルピ―は、2003年にEBSで放送を開始したテレビアニメ『ポンポン ポロロ』の登場人物の一つだ。インターネットミームを通じて話題となり人気キャラクターとして浮上し、国内外の有名ブランドのアンバサダーやモデルとして様々な活動をしている。2023年にはミネラルウォーターブランドの済州サムダスとのコラボで環境に優しいというメッセージを伝えている。
ⓒ I/O/E/SKB



様々なプラットフォーム

キャラクター産業は今や単なるグッズ販売を超えている。キャラクターがファンダムを形成したかと思えば、影響力を行使するインフルエンサ―としても活動している。これはキャラクター世代の変化が主要な要因だ。幼いころから漫画とゲームを通じてキャラクター消費に慣れ親しんだ世代が大人になり、キャラクター産業の主要消費層となったのだ。子供たちや一部のキッダルト文化のものとされてきたキャラクター消費が大人の文化に拡大したということだ。さらに互いの好みや趣味を尊重して、自分の好きなものを深く掘り下げるという若者世代の趣向は、キャラクターコンテンツの領域拡大において積極的に消費する土台となっている。

キャラクターの世界観を拡大し、時代に合わせた様々な戦略を駆使するのも新たな要因となっている 。以前はキャラクターコンテンツの消費は主に、テレビのような伝統的な媒体で行われていたが、最近では自主的に構築したチャンネルをはじめとしてユーチューブ、TikTok(ティックトック)、SNSなど、オンラインプラットフォームを通じて多角的に流通している。これによりコンテンツ表現と制作方式がより自由になり、若者世代の感性を反映させることが可能になった。またこれまではキャラクターからどんな派生事業を発展させるかで悩んでいたが、今ではキャラクターを通じてどんな経験を提供できるかに焦点を合わせた様々なプロジェクトが進行している。

韓国コンテンツ振興院によれば韓国国内キャラクターIP市場は、年々着実に成長しており、2025年には16兆2千億ウォンに達するものと期待される。これまで日本とアメリカ中心だったキャラクターコンテンツのパラダイムが韓国にシフトし、韓国産キャラクターもチャンスを迎えている。

ハヤンオリ

モランイはイラストレーターのユン・ヘジ(尹憓智)が2010年にオンラインを通じて発表したキャラクター。フランスのアニメーション制作社ミリマージュが2015年からテレビシリーズとして制作しており、ユーチューブとネットフリックスでも見ることができる。高い人気を得て様々なブランドとのコラボレーションを続けている。写真はソウル延南洞にあるポップアップストアー・ギャラリーモランイの内部
ⓒ ハヤンオリ



崔智恵ソウル大学校 消費トレンド分析センター研究員

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