中国が原産地の白菜はキムチの主材料であり、17世紀、韓半島で栽培され始めてから現在にいたるまで韓国人の食卓に無くてはならない栄養供給源だ。同じアブラナ科に属する他の野菜より相対的に低評価されているが、実は白菜はなかなか有益な野菜だ。
中学校の教科書に掲載された詩人、羅喜徳の詩『白菜の心』を読むと胸が熱くなる。
「夏の間、畑の土手を通り過ぎるときに忘れなかった言葉/私は君のおかげで嬉しい/よく育ってくれて嬉しく思う/晩秋の白菜の頭が縛られているのを見ると/それでも丈夫に大きくなり中までぎっしりだ」
詩的な想像力で白菜に人格を与えた詩人がいるほど白菜は韓国人に親しまれている野菜であり重要な野菜だ。
アブラナ科の葉野菜
白菜は大根や唐辛子とともに韓国人が好きな3大野菜の一つだ。中国が原産地ではあるが、韓国白菜(Korean cabbage)という固有の品種もある。白菜の形態、すなわち葉の詰まり具合によって大きさが3段階に分類される。砲弾のように全体が固く詰まった結球白菜、根の部分だけが詰まったものが半結球白菜、そして葉が詰まっていないものが不結球白菜だ。この3種類の中で主に結球白菜と半結球白菜を栽培して食べている。この2種類が早く育ち収穫量も多く、貯蔵しやすく扱いやすいという長所があるためだ。そうかと思えば、一般人にはあまり知られていない話だが、韓国の白菜はまた「ソウル白菜」と「開城白菜」に分かれる。「ソウル白菜」は背が低く葉の色が薄いのに比べて、「開城白菜」は相対的に背が高く色が濃いという差がある。
葉野菜である白菜は植物分類上アブラナ科に属する。アブラナ科の野菜には大根、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、ケールなどがあるが、その中でも西洋人の食卓によくあがるキャベツとブロッコリーなどは、すでにウェルビーングフード食品としての地位を固めている。しかし白菜と大根はその効能を明らかにする研究が相対的に少なく、他のアブラナ科野菜に比べてまだきちんとその価値が認められていないと言える。
味が良く栄養も豊富な秋の白菜
白菜は低カロリーで、思ったよりもはるかに健康に良い食品だ。生の白菜は100g当たり12kcalでキャベツや赤キャベツの半分の水準で非常に低い。茹でたり塩漬けにしても14kcalに過ぎないので負担にもならない。ナトリウムは11mg入っており、18㎎含有しているキャベツよりも低い、身体の抵抗力を強化させるビタミンAの含有量は263IUで98IUのキャベツよりも高い。
白菜は便秘と肥満予防に有効な食物繊維が豊富で、他の野菜より柔らかく、熱を加えると容量が小さくなるという特徴がある。特に腸で発酵しガスを排出することが少ないという点も目立っている。
白菜の効能に言及するときに最も強調される部分は、癌抑制効果が立証されていることだ。アメリカのハーバード大学医学部研究チームが、1986年から 1996年まで医療従事者の追跡調査に登録された4万 7000人の食習慣を調査し「白菜とブロッコリーの摂取が多ければ多いほど坊抗癌の発生リスクが低いことが分かった」と明らかにした。白菜の抗癌効果に対する研究は他にもいくつかある。韓国食品研究院が肝臓癌にかかった実験用のマウスに様々な野菜を食べさせた結果、白菜と大根を食べさせたマウスが一般の飼料で育てたマウスに比べて、肝臓がんの大きさが半分ほど小さかったことが確認されている。
「秋の白菜は扉をしめて食べる」という韓国のことわざがあるほどに、晩秋の白菜の味は絶品だ。それに消化も良い。水分量が95.6%にもなるほど多いからだが、このような理由から白菜は肉との相性もとても良い野菜だ。
昔は韓国人の冬の主食
家事のベテランである年配の主婦たちとは違い、キムチを買って食べる最近の若い主婦たちはどんな白菜が良いのか分からないだろう。白菜は葉先までかたく巻きがしっかりしていて、ずっしりと重いものが良い。また葉は薄く柔らかで、根元の部分がしっかり詰っていなければならない。外側の葉に黒い斑点があれば中までそのようになっている確立が高い。
今とは違って、白菜が四季を通じて出荷されなかった以前には、キムジャンの季節に合わせて秋に収穫した。晩秋、霜が降りる頃に出回るのが一番おいしいからだ。この時期を過ぎると気温がさらに下がり葉が硬くなってしまい味が落ちる。
韓国人は白菜で汁物を作ったり、合わせ調味料で和えたり、旬の秋や冬には、小麦粉をうすくつけてジョンにして食べたりもする地域もある。特に慶尚道地域でよく食べられているメニューだ。しかし何と言っても一番の用途はキムチだ。昔からキムチは「半食糧」となっていた。冬の季節は新鮮な野菜が手に入らないので、キムチはビタミンCなどの必須栄養素を摂取できる、ほぼ唯一の供給源だった。特に他の食べ物を摂取することの困難な貧しい庶民にとっては、より一層大切な食糧だった。
このようにキムチが韓国人にとって大切なおかずなので「キムジャン」という独特な文化が生じた。キムジャンは立冬を前後して長期間食べるキムチを一度にたくさん漬けて、貯蔵する古くからの伝統だ。一人でキムジャンをするのは大変なので、キムジャンの季節になると村の主婦たちが互いに助け合って行っていた。キムチの味を決定するのは白菜なので、キムジャンの季節に良質の白菜を確保することは主婦の課題だった。キムチを漬けるとき、材料の配合比率はそれぞれの地域と家庭ごとに基準が千差万別であり、それにより味もまたさまざまだ。またキムジャンはアミの塩辛や生牡蠣、新鮮な魚などを入れて漬け、ゆっくりと発酵させて食べるので栄養もより豊かだ。
韓半島で最近のような白菜が栽培され始めたのは17世紀の頃だと言われている。キムチを漬けはじめたのは18世紀だと推定されるが、今日のような唐辛子粉で味付けした真っ赤な辛い白菜キムチが登場したのは18世紀以降のことだ。唐辛子が白菜よりも後にこの地に伝わったからだ。18世紀以前には塩水だけで白菜を漬けていたのだろう。
最近の韓国人が食べているような白菜キムチが登場した18世紀は、朝鮮の経済活況期にあった。主食の米の消費量が増えるとともに、それと相性の良い白菜キムチも全盛期を迎えた。このみごとな組合せは最近の調査でも依然として有効だ。檀国大学校食品栄養学科研究チームが2016年「食品と健康ジャーナル」に発表した研究論文によれば、韓国人が一日に3回以上摂取する食べ物の1位と2位が米飯と白菜キムチだった。しかし、食卓が欧米化するにつれて肉類の消費は増加する一方で、米の消費量は減少を続けている。白菜キムチは米飯を美味しく食べるために発達したおかずなので、米の消費量が減少すれば白菜キムチの需要もともに減るものと見られる。
白菜は汁物にしたり、或いは塩漬けにした後にいろいろな材料を包むサムにして食べたりする。茹で豚と生牡蠣を柔らかな白菜の葉で包んで食べるポッサムは、現代の韓国人が好んで食べる料理の一つだ。
主食である米の消費量が増えるとともに、相性のよい白菜キムチが全盛期を迎えるようになった。このみごとな組み合わせは現在までも依然として有効だ。白菜キムチはご飯を美味しく食べるために発達したおかずなので、米の消費量が減れば白菜キムチの需要もともにに減るものと思われる。
西洋人が好きなキャベツ
よく発酵したキムチを食べやすい大きさに切り、器に盛る。白菜キムチはご飯を主食とする韓国人の食卓に無くてはならない基本メニューだ。
西洋ではキャベツが韓国の白菜のように大切にされている。「貧しい者にとってキャベツは医者」ということわざを持ち、オリーブ、ヨーグルトと共に3大長寿食品に上げられており、価格も安いのでそんな話が生まれたのだろう。キャベツはギリシャの哲学者ディオゲネスが好んで食べたと伝えられている。好事家たちは、アレキサンダー大王に訓戒したとして有名なディオゲネスが、非衛生的な環境の中でも90歳まで長生きできたのはキャベツのおかげだという。キャベツは白菜と同様に低カロリー、高カルシューム、高ビタミンCの食品だ。100g当たりの熱量は24kcalに過ぎずダイエット中の人にも人気が高い。
一つだけ面白い点として、医療界でキャベツが高い評価を受けているのは、ビタミンUの存在のためだという事実だ。1949年アメリカスタンフォード大学研究陣は「キャベツの青汁が胃潰瘍の治療効果がある」と発表した。一週間だけキャベツの青汁を摂取しただけでも潰瘍が治ったが、それを可能にする物質がビタミンUだという説明だ。ビタミンUは後にアミノ酸の一種のグルタミンだと明らかになった。人口調味料の主原料であるグルタミンは胃腸管内の細胞の再生を助ける役割をする。最近ではキャベツが抗癌食品、骨折予防食品として期待を集めている。