最近、VR(バーチャル・リアリティ)テーマパークが都心の新たなプレイ空間として浮上している。オンラインゲームに慣れ親しんでいる若者世代はもちろん、家族連れからも脚光を浴びている。先端技術がもたらした新たな体験への好奇心が、新たな余暇文化を作り上げている。
ション」に訪れた人々が「マリオ・カートゲーム」をVR(バーチャル・リアリティ)で楽しんでいる。
「前にある装備を着用してください。もし途中で気分が悪くなった場合は、手をあげてお知らせください」
ガイドの説明が終わると、ジェットコースターの乗客5人がわくわくした表情でHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を頭につける。しばらくすると、椅子は上下左右に少しずつ揺れはじめ、さらに前に倒れたり、後ろにそったりを繰り返す。30代くらいの女性は信じられないというようなビックリした表情で頭を左右に振っている。
「さあ、落ちますよ。ドーン!」
ガイドの声に乗客はさらに興奮する。万歳を叫びましょうという声に両手を振り上げた子供もいる。本当にジェットコースターに乗っている体験をしているようだ。1分30秒ほどの時間が過ぎ、ジェットコースターが停止すると、左右に頭を揺らしていた女性は、席から立ち上がるときにふらついていた。
人気の秘密
ここは国内VRプラットホーム会社のGPM社が運営する仁川松島のVRテーマパーク「モンスターVR」で、去年の12月に見かけた光景だ。ちょうど週末だったこともあり、園児や小・中学生の子どもを連れた家族の姿が目立った。ここで体験できるバーチャル・リアリティはジェットコースターだけでなく、ボブスレー、ラフティング、バンジージャンプ、熱気球のようなレジャースポーツや、バンパイヤ、ゾンビ、恐竜との戦いのような恐怖体験など、種類も多彩である。2017年の夏にオープンしたこの施設では、計40種類のVRアトラクションが楽しめる。一つの空間で短い時間にいろいろな種類の体験ができるという点が人気なのだろう。
価格面でも既存のテーマパークより安い。アトラクション一つが週末基準で成人一人当たり9000ウォンで、3種類から5種類楽しめる利用券も別にある。もっと多くのアトラクションを利用したいときは、一人当たり3万2000ウォンの自由利用券を買えば、最長で3時間楽しめる。
この日、家族連れの男性は「寒い日に子どもたちを連れて遊びに行くのに、適当な場所がなかなかありませんでした。子供たちは今日、VRをはじめて体験したのですが、とても喜んでいました」と話していた。VRテーマパークが増加している理由には、コンピュータやゲームに慣れ親しんだ若者世代には、デートコースとしてピッタリだし、家族単位の利用客にとっても十分に楽しめるという点が関係しているようだ。特にVRテーマパークは都心に位置しているので、郊外にある既存の遊園地よりはるかにアクセスしやすい。交通渋滞の中を長距離運転をしなくてもすみ、さらに真夏の暑さ、真冬の寒さにも関係なく、快適な時間を過ごすことができる。また大部分が大型ショッピングセンターの近くにあるので、ショッピングとレジャーを一度に楽しめるというわけだ。
そのような様々な長所のおかげで、ここではオープン4カ月で利用客数10万人を超え、1年間に30万人以上が訪れたと集計された。2018年8月にここを取材したあるゲーム専門メデイアの報道によれば「一日の累積入場客数は平均2000人以上で、訪問客全体のおよそ80%が10~30代だった」という。
江原道洪川のビバルディパークに作られた体験型メディアテーマパーク。ここでは山全体に映像を投射するメディアファサード、ホログラムと事物のインターネット基盤のインタラクティブメディアプログラムと共に多様なVRゲームも楽しむことができる。ⓒ CJハロー
大衆の関心
「VR(バーチャル・リアリティ)」という用語は、科学界ではなく演劇界で最初に使われた。1930年代のフランスの劇作家アントナン・アルトーは、エッセイ集『演劇とその分身』で、観客が劇場で見るのは実際の俳優ではなく「光とイメージ」に過ぎないという点を強調し、バーチャル・リアリティという用語を始めて使用した。その後、アメリカのコンピュータ科学者アイバン・サザランドにより、1968年HMD(ヘッドマウントディスプレイ)の原型が開発され、1989年には「コンピュータで再構成された仮想空間」という現在のVRの概念が定められた。こうしてみるとVRは、21世紀の科学の寵児というよりも、20世紀の文化遺産だと見ることもできる。
2017年3月ソウル江南のCOEXで一般向けに開かれた「VRエクスポ2017」には、4カ国から53社のVR関連企業が参加し、3日間の入場者総数は1万3765人に達した。この展示ではビデオゲーム以外にも、旅行、訓練、運動、健康、建築、教育分野など様々なVR応用技術が公開され、注目を浴びた。2018年12月に同じ会場で開かれた「VRエクスポ2018」には、国内外200余りの企業が参加し、より大規模に進化した。韓国VRAR産業協会は、2016年1兆4000億ウォン規模だった韓国VR市場の規模が、2020年には5兆7000億ウォンに達すると予測している。
VRテーマパークの増加は、最近国内で新たな余暇産業が台頭してくる時のパターンを継承しているものだといえる。例えば、20年前にはインターネットカフェが続々と誕生し、2000年代の初めにはソニーのプレイステーションやマイクロソフト社のエックスボックスなどで、ゲームを楽しむプレイステーション・カフェが人気を集めたように、ここ数年の間にVRゲームが話題になり、それと同時にVRテーマパークが急速に増えているのだ。今やVRテーマパークと提携して影響力を増そうという企業も出てきている。
弾けた広がり
まずケーブルテレビ放送の事業社であるCJハローは、大明リゾートと共にVRテーマパーク事業に飛び込んだ。2018年6月、大明リゾート内に「ハローVRアドベンチャー」をオープンしたが、主に家族単位の来場者向けのアトラクションとゲームを備えている。
ロッテデパートはデパート業界初のVR体験スペースを立ち上げた。仁川松島でVRテーマパーク「モンスターVR」を運営しているGPM社と共に、2018年8月にソウル広津区紫陽洞のスターシティ店10階に、VRテーマパークをオープンした。ここは60個以上のコンテンツを揃えており、大学街にあるため週末には友達グループやカップルなど若者層が顧客の大部分を占め、好況を博している。
現代デパートグループ系列のIT専門企業も2018年11月に、VRテーマパーク「VRステーション」をソウル江南駅近くにオープンした。総面積が3960㎡規模で地下1階から3階までの4フロアーで構成されたこのテーマパークは、国内外の有名なVRゲームをすべて取りそろえている。海外の有名ゲーム会社とコンテンツ独占供給契約を締結し、VR技術を活用して映画、メディアアート、デジタルコミックなど多様な文化コンテンツもともに紹介している。特に映画では最高級仕様のヘッドセットとモーションチェアを提供している。
VRテーマパーク専門会社のイルーションワールド社は今年1月、ソウル東大門グッドモーニングシティのショッピングモールに、国内最大6600㎡ほどの大規模な「東大門VRイルーションワールド」をオープンした。ここには一般的なVRコンテンツ以外にも未来世代のための進路職業体験プログラムがあり、注目される。
VRテーマパーク間の競争も激しくなっているが、およそ30年間テーマパーク事業を展開してきたロッテワールドアドベンチャーも、この熱気に反応している。ロッテワールド側は「既存のVRテーマパークが、主にゲーム型コンテンツを提供しているのに対して、わが社では今後テーマパークにあったアトラクションを開発して差別化していく」と抱負を語っている。
このようにVRテーマパークは、個人の日常的な暮らしとは距離があるように見えていたVRの世界を、身近なものにすることに一役買っている。今後、夢と想像力を刺激するVRアトラクションが数多く開発され、観覧客に新たな楽しさを提供してくれるだろう。