アパートなどの集合住宅は、住む人の嗜好と関係なく、ビルトイン家具や照明器具を画一的に施工する。多くの韓国人は、そのような居住環境によって、家具など室内インテリアに比較的関心が低かった。家具市場も、少数の家具好きのための輸入高級ブランド品や伝統的な家具職人の作品、あるいは一般大衆向けの安価な合板家具という単純な分け方だった。しかし、2000年代になると個人の嗜好が次第に重視され、個性的な家具のニーズが高まったことで、家具文化にも変化が起き始めた。最大の変化は、創造的なセンスを前面に押し出した若いデザイナーの登場だ。伝統的な要素を適切に取り入れた、親しみがありながら新鮮な作品で、新しい風を吹き込んでいる4人の家具デザイナー。その代表的な作品を紹介しよう。
『スチーム11』ペ・セファ、2010年、クルミ材、120(W)×70(D)×71(H)㎝スチームベンディングとは、木を4~5時間蒸して軟らかくした後、また硬くなるまでの10秒ほどの短い間に、木を曲げて形を固定させる方法。ペ・セファ氏は、この西洋の伝統な技法を利用して、韓国的な繊細さを表現する。同氏がデザインした椅子は、韓屋の屋根の軒のラインから感じられる自然で流麗な美しさを秘めている。ペ・セファ提供
『サランバン(Sarangbang)』 ソン・スンヨン、2011年、シラカバ・韓紙・混合材料、140(W)×85(D)×174(H)㎝ソン・スンヨン氏は、主に伝統的な韓屋の構造と材料からインスピレーションを得ている。昔の両班(支配階級)の家屋で、亭主が生活、読書、客人への応接などをしたサランバンの機能を反映して、シンプルで優雅な応接の空間を生み出した。扉の開閉ができ、その扉の枠と韓紙がこじんまりした空間感をもたらす。ソン・スンヨン提供
『ダミ(Dami)』ソン・スンヨン、2012年、Valchromat(バルクロマット)、ランプ:40(W)×40(D)×127(H)㎝、テーブル:140(W)×38(D)×45(H)㎝ダミ・シリーズは、面でなく線で形作られており、軽いのが特徴。このランプとテーブルのアンサンブルにおいて直角に交差する端正な線は、韓屋の窓枠を思い起こさせ、シンプルで節度ある形態が独特な印象を与えている。ソン・スンヨン提供
『Playful Wave』キム・ジンシク、2017年、大理石・ステンレス、220(W)×105(D)×74(H)㎝キム・ジンシク氏は、材料の物理的な特性を突き詰める。波の上で卓球をするという想像から始まったこのテーブルでは、大理石の模様と質感によって、波打つ海の感じを伝えようとしている。テーブルの天板の中央にあるネットの部分は、金属のフレームにはめ込まれている。このつなぎ方は、韓国の伝統的な木造建築の「結構法(木組み)」に通じるものがある。キム・ジンシク提供
『HalfHalf Low 120』キム・ジンシク、2016年、大理石・鏡面仕上げステンレス、120(W)×70(D)×38(H)㎝美しい曲線のステンレスの表面に、大理石の鮮烈な模様と色彩が反射し、新しい視覚的な質感を生み出している。円と四角の形態的な組み合わせ、そして石と金属の形質的な対比を家具として再解釈したシリーズの一作品。デザイナーの徹底した職人気質が、単純な比例と形態が際立ちやすいという欠点を克服し、完成度を高めている。キム・ジンシク提供
『ダジ(Dazzi)』ハ・ジフン、2012年、合板・パウダーコートスチール、55(W)×47(D)×72(H)㎝伝統的な木の収納家具「パン(半)ダジ」に使われる「装錫(装飾金具)」の多彩なデザインを活用したシリーズの一作品。伝統の再解釈に注力してきたデザイナーの蓄積が、古典的な美しさと現代的なシンプルさを凝縮して、時代を超えた美感に昇華させている。ハ・ジフン提供
『Pittsburgh』ハ・ジフン、2015年、オーク・アルミニウム、机:150(W)×75(D)×72(H)㎝、椅子:47(W)×38(D)×72(H)㎝「床座」の生活環境で使用していた羅州(ナジュ)式の伝統的な「小盤(お膳)」の構造的な美しさを「椅子座」の机と椅子に融合させた作品。羅州式小盤の名工とコラボレーションしたもので、米国ピッツバーグ大学「学びの聖堂」の「韓国ルーム」の開館に合わせて作られた。ハ・ジフン提供