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Tales of Two Koreas > 상세화면

2017 SUMMER

北朝鮮の反体制文学の発見

北朝鮮の実像を暴露する脱北者の手記とは違い、現在北朝鮮に暮らしながら北朝鮮内部の現実について、卓越した文学的な視点から批判をしている作家の小説集が注目を浴びている。紆余曲折の末に閉鎖社会の国境を越えて2014年にソウルで出版された『告発』は、その後海外でも多くの言語に翻訳·出版されている。世界の読者に、社会主義リアリズムや主体文学に対抗する北朝鮮文学も存在することを、知らしめている。

西側世界で知られている北朝鮮文学とは、そのほとんどが3代にわたり引き継がれてきた金日成一家の独裁体制を賛美し、偶像化するツールに過ぎないということだ。実際に北朝鮮文学は依然として最高指導者の統治理念に従い、創作の大きな枠組みが決められる。毎年元旦に発表される指導者の新年の辞が、その年の文学の方向性と作品内容の大筋となるからだ。

賞揚と社会批判

かといって体制に対する賞揚一色の文学作品だけかと言えば、それは間違いだ。北朝鮮の公認作家組織である朝鮮作家同盟中央委員会の詩分科に所属し文芸活動をしていて、1998年に脱北した詩人のチェ・ジニさん(58歳)の証言は、社会通念とは少し違っている。「韓国では北朝鮮の作家たちは賞揚文学だけを書いていると思われているようだが、決してそうではない。北朝鮮は独裁社会なので、外から見れば体制賞揚的な文学が多いように見えるが、体制を賞揚する作家は極端なご機嫌取り主義者であり、文学に対する基本概念が無いのではないかと思われる事例が少なくない」。

朝鮮作家同盟所属の作家たちも親しい人だけが集まる席では、たまに体制に対する婉曲な不平や不満を漏らすこともあるとチェ・ジニさんは語る。金日成、金正日親子に対する賞揚の詩を多数書いたある作家は、同僚の作家たちからこう非難された。「お前は暇さえあれば金日成親子の悪口ばっかり言っておきながら、どうしてそんなにたくさんの賞揚詩がかけるんだ」。するとその作家は「私は金日成親子ではなく私の神様を思いながら詩を書いているんだ。そのどこが悪い」と言い返したという。金正日前国防委員長も一度、作家同盟の賞揚の詩を見て「鳥肌が立つほどだ」とゲンナリとした顔で言い放ったこともあったということだ。

北朝鮮の作家たちにも文学本来の自立性と社会主義体制維持を前提とした社会批判が少しずつ認められ、日常の愛情表現、職業選択、離婚、都市と農村の格差、世代間のギャップなど様々な問題にも関心を示すようになっているという。

ナム・デヒョンの『青春頌歌』(1987)、ペク・ナムリョン(白南龍)の『友』(1988)は、1990年代後半に韓国にも紹介されたほど脱イデオロギー的な小説だ。『青春頌歌』は青年知識人、科学者、技術者たちを主人公に、若者たちの価値ある人生を形象化しながら男女間の恋愛倫理を扱った作品だ。離婚問題を扱い北朝鮮でベストセラーになった小説『友』は、2011年フランス語に翻訳出版され海外の読者の注目を集めた。北朝鮮の文学作品がヨーロッパで出版されたのはこの作品が最初だった。2004年韓国で出版されたもう一つの北朝鮮小説であるホン・ソクジュン(洪錫中)の『黄眞伊』は、2002年に平壌の読書界を席巻した人気歴史小説だ。ホン・ソクジュンは南北双方で高い評価を受け、幅広く読まれている歴史大河小説『林巨正』の著者ホン・ミョンヒ(洪命熹、1988-1968)の孫でもある。

匿名作家・ホタルの問題作

これらとは違い、北朝鮮内で反体制文学作品を出すことはタブーだ。体制を正面から批判する内容の含まれた作品は、北朝鮮特有の政治犯収容所行きを覚悟しない限り、日の目を見ることはない。

このような状況下で、北朝鮮在住だと知られている顔の無い作家の問題作が最近になり、韓国と西側世界で大きな注目を浴びている。「ほたる」というペンネームの北朝鮮作家の短編小説集『告発』がそれだ。この作品は韓国よりもフランスと英語圏の国々で、より脚光を浴びている。フランスで最初に付けられた「北朝鮮のソルジェニーツイン」というニックネームのおかげでさらに有名になった。ホタルというペンネームは「暗闇の中で光るホタルのように」北朝鮮の現実を照らしたいという意志を込めて、作家自身が付けたペンネームだ。

ホタルの身の上は、ノーベル文学賞作家のアレクサンドル・ソルジェニーツイン(Aleksandr Solzhenitsyn, 1918-2008)の置かれていた状況と非常によく似ている。自国の政治体制に反対し、国内での出版が不可能なため、外国に原稿を送ったという状況が同じなのだ。今では地球上から消え去ったソビエト連邦の文学が外部世界で評価を受け始めたのは、ソルジェニーツインがスターリン独裁体制の蛮行を告発した『イワン・デニーソヴィチの一日』『収容所群島』などを発表してからだ。北朝鮮の反体制文学が海外で関心を集め始めたのは、ホタルの小説集『告発』のおかげだといえる。

7編の短編をオムニバス形式にした『告発』には、北朝鮮体制のもとで生きる様々な人々の苦しい生活がフィデリティに描写されている。それぞれ異なる素材と事件を扱ってはいるものの、「金日成時代に対する批判」という大きなテーマでは一貫している。

冒頭に納められている『脱北記』は、密かに避妊薬を飲んでいる妻を疑う男が代々受け継がれる身分制度に絶望を抱き、ついに北朝鮮を脱出する決心をして、その過程を友人に知らせるという手紙形式の短編小説だ。『幽霊の都市』は、街で金日成の肖像画を見るとひきつけを起こしてしまう3歳児のせいで、窓のカーテンをおろして閉めきって暮らしていた家族が「首領様冒涜罪」で平壌から地方に追放されてしまう物語とともに、兵営国家の実像が描かれている。『目と鼻が万里』は、旅行証明書無しには移動が禁止されている北朝鮮で、密かに汽車に乗り故郷の入口まで行ったものの、検問所で阻まれて老母の臨終さえ看取ることのできなかった息子の悲しい話だ。

最後に収録されている『赤いキノコ』は、共産党の党舎を「毒入りの真っ赤なキノコ」に喩えて「あの毒キノコを抜き取ろう。この地から、いや地球上から永遠に」と絶叫する北朝鮮の記者を登場させ、金一家の政権打倒を促している。7編の作品の順序は、脱北という消極的な抵抗からプロレタリア独裁の産室である共産党舎を打倒しようと叫ぶ段階まで、作家の綿密な意図が反映されていると言える。

北朝鮮のソルジェニーツイン

この小説集の原稿が2013年に韓国に伝わった過程は、スパイ作戦を彷彿させるもう一つのドラマだ。ホタルの親戚である若い女性が脱北に成功しソウルに来ることができた。数カ月後、彼女はト・ヒユン(都希侖)拉致脱北人権連帯代表に原稿の話を持ちかけた。ト代表は北朝鮮を訪れる中国人の友人を通じて「原稿を渡して欲しい」という手紙をホタルに送った。手紙を読んだホタルは密かに隠しておいた原稿の束を取り出して、プロバガンダ用として作成・配布された『金日成選集』『金正日労作』のような本の間に隠して渡した。

原稿用紙は1960-70年代に作られたものではないかと思われるほどにヨレヨレだった。褐色に変色した原稿用紙の上にボールペンではなく鉛筆で力を込めて一字一字しっかり書かれた痕跡がありありと見て取れたという。作家は原稿の題目を『告発』と自ら定め、ホタルというペンネームも本人が決めたものだ。ホタルは現在、北朝鮮に居住する1950年代生まれの男性で、朝鮮作家同盟所属の作家だとト・ヒユン代表は証言する。しかし、この証言には作家を保護しようという意向が含まれているというのが大方の見方だ。ト代表は紆余曲折の末、2014年5月にこの貴重な作品集を世に出した。

実は韓国ではこの作品に注目した人はあまりいなかった。作家が脱北者ではなく北朝鮮に住んでいるという事実と原稿の搬出過程だけが大きな話題になったにすぎない。その過程でホタルが架空の人物ではないかという疑惑を提議した人々もいた。このような状況の中で、作品がもつ本当の価値と文学性はきちんと評価されることがなかった。

冷淡だった韓国内での反応とは違い、2016年フランス語に翻訳されたフランス語版が世に出ると、海外での反応が熱くなり始めた。フランス語版の序文を書いた北朝鮮人権運動家のピエール・リグロフランス社会史研究所長が、作家ホタルを「北朝鮮のソルジェニーツイン」と表現すると、外国のマスコミは一様にこれを引用した。リグロは「小さなホタルの光ではあるが、希望は大きい」という意味の題目を付けた序文を書いた。日刊紙のフィガロ、リベラシオン、ラジオ放送のエンテル、エンポ、RFI、雑誌マリアンヌのようなメディアがこの本について大きく報道した。翻訳者イム・ヨンヒ(57)さんは、「韓国の小説を長い間、翻訳してきましたが、『告発』ほど知的な喜悦を感じたことはありませんでした」と述べ、「小説の構想が非常に素晴らしい」と賞賛した。

『告発』は2017年3月を前後してアメリカ、英国、イタリア、日本、カナダ、ドイツ、スウェーデン、ポルトガルなど21カ国で19の言語に翻訳されて出版された。韓国の作家・ハンガン(韓江)の『菜食主義者』を英語に翻訳し、英国のブッカー賞インターナショナル部門を受賞した英国人の翻訳家デボラ・スミス(30)さんが英語版の翻訳をした。この英語の翻訳本『The Accusation』は、英国ペンが選定する2016年下半期の翻訳賞受賞作にも選ばれた。アメリカニューヨークではホタルをノーベル文学賞の候補にするために、在米同胞の集まりが結成されたという。

英国の日刊紙『ガーディアン』は、「北朝鮮に暮らしている匿名作家・ホタルが書いた反体制の物語は、ベールに包まれた独裁政権下から現れた非常に貴重な作品だ。全世界的なセンセーションを文学界に巻き起こすだろう」と好意的な論評をのせた。

2017年3月30日、京畿道坡州の非武装地帯の南に位置する臨津閣自由の橋で開かれた 『告発』の朗読イベントで、世界各国の出版関係者と人権運動家がカメラに向かってポーズをとっている。

英国の日刊紙『ガーディアン』は、「北朝鮮に暮らしている匿名作家・ホタルが書いた反体制の物語は、ベールに包まれた独裁政権下から現れた非常に貴重な作品だ。全世界的なセンセーションを文学界に巻き起こすだろう」と好意的な論評をのせた。文学専門誌のザ・ミリオンズは『告発』を、「2017年の最も期待される作品の一つだと」取り上げた。アメリカの書評誌パブリシャス・ウイークリーは、「理解不能な北朝鮮の生活を扱った非常に珍しい作品」だと評し、アメリカのオンライン書店アマゾンは、「閉鎖的な一党独裁社会を生々しく描写した非常に感動的で驚くべきフィクションとして、ヒューマニズムに対する希望に満ちた試みの作品」だと紹介している。

英国版の出版社「Serpents Tail」の発行人ハンナ・ウエストランドは、「権力の前で真実を話すという点ではソルジェニーツインを連想させ、痛烈な風刺は20世紀ロシア文学の巨匠ミハイル・ブルガーコフを連想させる」と評価している。慶熙大学校国語国文科のキム・ジョンヒ教授は、「技巧的な側面では韓国現代作家たちと相当な差があるものの、北朝鮮文学の公式的な目標が金日成家系の偉大さを示すことだという点から考えれば、技巧だけで水準を判断することはできない。体制を正面から告発する抵抗精神に比重を置くべきだ」と述べた。

移して再出版されることになった。新しい表紙とともに作家の最初の原稿を忠実に再現しており、作品のもつ文学的な価値に焦点が当てられ、改訂版を出版するタサンブックスは、「3年前に出版されたときとは感じがだいぶ違っているだろう。市場性も十分なものと判断している」と説明する。

北朝鮮の文学作品を見る韓国の視線

ここで注目すべきことは、他の脱北文学者たちの作品も国内よりはむしろ海外で、より注目を受けるケースが続いているという点だ。脱北詩人のチャン・ジンソンは北朝鮮住民の実像を端的に示す詩集『私の娘を百ウォンで売ります』で、2012年英国オックスフォード大学レクスウォーナー文学賞を受けた。以後2014年に出版されたエッセイ『敬愛する指導者に』は、英国図書販売順位のトップ10入りしている。朝鮮作家同盟所属の作家として平壌で活動し、2000年に脱北したキム・ユギョンが2016年に出版した長編小説『人間冒涜所』は、フランスの出版社フィリップ・ピキエと版権契約を結んだ。脱北文学者の作品が海外で脚光を浴びているのは、実際の経験から紡ぎだされた生々しいリアリズムにあると思われる。

北朝鮮文学作品に対して相対的に韓国の反応が冷たいのは、好奇心と切迫感の温度差から来るもののようだ。韓国人は北朝鮮と休戦ラインをはさんで対峙している上に、マスコミを通じて北朝鮮の悲劇的な実像に日常的に接しているので、これを扱った文学作品から新鮮な感動を受けることは難しい。アメリカやヨーロッパの人々が北朝鮮の核兵器の脅威や朝鮮半島の戦争の可能性を強く受け止めている時も、韓国の人々は「危機の慢性化」による体感温度差ゆえの現象と似ている。一部の保守的な評論家たちは、北朝鮮文学を理念論、さらにはイデオロギー論で眺める認識が存在しているからだという分析をしている。

キム・ハクスン金学淳、ジャーナリスト、高麗大学校メディア学部招聘教授

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